ショートリストやロングリストとは何か
国連のシステム内にいると、「ショートリスト」や「ロングリスト」という言葉をよく聞くようになります。
簡単に言ってしまえば、「ショートリスト」は人事採用において、採用試験において優先的に審査される候補者のリストをさします。別の言い方をすると、採用活動においてよりより採用される可能性の高い候補者のリストです。
「ロングリスト」とは、落第ではないにせよ、「ショートリスト」の次点に当たる人々のリストのことをさします。
ショートリストやロングリストは、書類選考や筆記試験等で作られる
国連の採用活動においては、書類選考において「ショートリスト」と「ロングリスト」を作成します。
例えば、書類選考では下記の三点を基準に審査します。
- 学歴
- 職歴
- 言語
募集要項に学歴、職歴、言語において、「必須(Required)」のものと「あれば望ましい(Desirable)」の項目があります。これら二つの要素が上記の3つの項目に対してどれほど合致するかでショートリストとロングリストになるかが決まります。
学歴や言語に関しては詳しく知りたい方は「国連職員になりたければ、最初から大学院を視野にキャリアプランを」や、「国連人事の仕組み:学歴と言語能力に関して」の記事をご覧ください。
関連記事 >>「国連職員になりたければ、最初から大学院を視野にキャリアプランを」
関連記事 >>「国連人事の仕組み:学歴と言語能力に関して」
また、求められる職務経験年数が知りたい方は「国連人事の仕組み:国連で求められる勤務経験年数を教えてください」の記事をご覧ください。
関連記事 >> 「国連人事の仕組み:国連で求められる勤務経験年数を教えてください」
書類選考における結果は、Not Suitable, Long List, Short Listの三つ
上に述べた三つの項目に対して審査が行われ、採点結果を採用マネージャーは各候補者に対して三つのうちの一つの結果を記します。
- 適さない(Not Suitable)
- ロングリスト(Long List)
- ショートリスト(Short List)
の三つです。
1、「Not Suitable(適さない)」に関して
「必須(Required)」の項目が一つでも満たしていない場合は、「適さない(Not Suitable)」と採点されます。
この学歴、職歴、言語において、「必須(Required)」の項目は全て基準をクリアしていなければなりません。一つでも満たさない項目がある場合は、「適さない(Not Suitable)」と評価され書類選考で不合格となります。
(2021年9月22日更新:私が所属していた時、不合格になった人には連絡をしていない場合がありました。そのため、書類を出した人はあまり期待しすぎることなく気長に待ちましょう。)
候補者が多い場合、必須項目を全て満たしつつも、あれば好ましい項目(Desired)がないもしくは少ない場合でも「Not Suitable(適さない)」と評価される場合があります。
2、「Long List(ロングリスト)」に関して
「必須(Required)」の項目を全て満たすが、「あれば望ましい(Desirable)」項目があまり満たせていない人は、「ロングリスト(Long List)」に入ります。
ロングリストに選ばれる人は、基本的な要件を満たしているけれども、募集要項に書かれている「あれば望ましい(Desirable)」項目をあまり満たせていないという方々です。次の審査をする上での資格はあり、ショートリストに移される可能性のある人々です。
ただし、ショートリストの人から審査されるため、ロングリストに選ばれたとしても審査されずに終わる可能性が(大いに)もあります。
3、「Short List(ショートリスト)」に関して
「必須(Required)」、「あれば望ましい(Desirable)」共に全てもしくは限りなく全てのの要件を満たす人はショートリストに入ります。
ショートリストに選ばれる人は、基本的な要件を満たし、且つ「あれば望ましい(Desirable)」項目も全て(もしくはほぼ全て)満たしている人が選ばれます。
これは応募者の数と質によって厳しさが変わります。もし「あれば望ましい(Desirable)」項目の全てを満たす人が多ければ、全てを満たす人でないとショートリストに選ばれません。
逆に、「あれば望ましい(Desirable)」項目を満たす人があまりいない場合は、比較的に多くを満たす人がショートリストとして選ばれます。
ショートリストに選ばれることを何よりも優先する必要があります。その為の、対策も当然ながら必要です(後述します)。
ショートリストに選ばれた人から、次の試験である筆記試験や面接試験に挑戦することができます。筆記試験や面接試験に関しては 「国連の人事制度:書類選考後の筆記試験や面接に関して」 の記事や、「国連組織の筆記試験について調べてみる」の記事をご覧ください。
関連記事 >> 「国連の人事制度:書類選考後の筆記試験や面接に関して」
関連記事 >> 「国連組織の筆記試験について調べてみる」
ショートリスト(Short List)に入るための対策
このように仕組みを見ていくと、「Desirable」の項目をいかに満たすかが重要であるとわかって頂けたと思います。書類ではRequiredとDesirable全て満たしていることがわかるよう、書き方を工夫する必要があります。
国際機関や転職活動をあまりしたことがない方に陥りがちなのが、一つの応募用のレジュメやCV、PHPを作って、ひたすらそのコピーを色んな機関に送ることです。
このやり方は、何十回何百回と推敲された素晴らしいものでない限りは、ほぼ意味がないと思ってください。
原則として、「応募要項ごとに、求められている項目に合わせて内容や表現、キーワードを変更して提出」してください。
Desirableな項目をなるべく全てカバーしているように書類審査官に思わせるような書き方をしてください(もちろんん嘘はダメです)。
重要なことは下記の通りです。
- 評価基準は全て応募要項の中に入っていることを理解する
- 応募要項で使われているキーワードを使うこと
- 関連する業務のわかりやすい業績を明記する
- 行間を読むことを期待しない
- 短すぎないこと
対策1:評価基準は全て応募要項の中に入っていることを理解する
書類選考をする上で、応募者はこの原則をしっかりと理解しておく必要があります。
書類審査をする際の評価は、応募要項に書かれている項目に対して、それぞれ点数があり、その合計点で審査します。
もちろん、応募要項には求められていない突出した業績等があれば目立つことがあるかもしれませんが、それ以上に重要なのが求められている項目を着実に満たし、しっかりと加点してもらうことです。
対策2:応募要項で使われているキーワードを使う
応募者が何百人もいる関係で、書類審査官は効率的に書類選考を進めなければなりません。
ただでさえ、PHPは10ページを超えることが多いので、審査官は「Ctrl + F」の検索でキーワードで内容を検索することが多いと思います。
キーワードで検索をして、その周辺の文章を読むというのを繰り返しているケースを何度/何人も見てきました。
キーワードが何かを見極めるためにも、応募要項を読み込みましょう!
対策3:関連する業務のわかりやすい業績を明記する
次に重要なのがインパクトです。わかりやすいのが数・規模・複雑さ・困難さを使った表現です。
- 人数
- 予算 / 売り上げ / 利益
- 規模(町 / 都市 / 国 / 大陸)
- 多文化 / 多国籍 / 多民族
- カオス / 複雑な事情
- キーパーソンの説得困難性など
これらのことを、一文で強烈に表現し、補足説明をするとより良いと思います。
詳しくは、「あなたの応募書類を今すぐできる改善方法(レジュメ・CV・PHPの書き方)」をご覧ください。
関連記事 >> 「あなたの応募書類を今すぐできる改善方法(レジュメ・CV・PHPの書き方)」
対策4:行間を読むことを期待しない
これは言葉の通りで、行間は読んでくれないものと思って書類を書いてください。
なんとなく経験を書いただけでは、伝わらないことが多々あります。
何かできる「かも」しれない不確実なものに対して、想像を膨らませることはかなりの労力になります。
例えば
- 「Aをやってきました、Bもやってきました」
- 「Cができます。Cができる理由はAとBをしてきたからです。」
という二つの文章があったとして、「Cができる」に結びつくのはどちらでしょうか?
後者ですよね。
前者の方だと、Cができるかもしれないし、できないかもしれない。
わからないので加点はしないでおこう、となる可能性があります。
対策5:短すぎないこと
これは人によって意見が異なるかもしれませんが、各職歴の説明が少なくとも一、二文で終わってしまい何をしたのかがわからないという状態は避けてください。
全く関連しない経験の場合は別ですが、少しでも関連しそうであればしっかりと書きましょう。
カバーレターに関して
カバーレターにそれらの要件を満たしていることをアピールする人もいますが、特に職歴でそれをしっかりと述べていることがとても重要です。(なかにはカバーレターは全く読まない人もいるようです)。カバーレターをどんなことを書けばいいか自信のない方「国連採用試験:(書類選考)カバーレターの書き方」の記事をご参照ください。
関連記事 >> 「国連採用試験:(書類選考)カバーレターの書き方」
また、もっと国連の仕組みを知りたい!という方がいましたら、是非とも「国連職員になるには」の記事も読んでいたでいただければと思います。
関連記事 >> 「国連職員になるには」
以上、「国連人事の仕組み:採用でよく聞くショートリスト、ロングリストとはなんですか?」についてでした。