この投稿は近々行われます、在タイ日本大使館で行われる、国連職員を対象とした勉強会にて発表する内容の一部を皆さんにも日本語でシェア致します。
なお、国連事務局の筆記試験等に関しては下記をご覧ください。
国連組織における採用制度は組織によって異なる
今まで、国連事務局の採用人事制度を中心に述べてきましたが、実際には国連組織によって採用基準やその方法のゆらぎがあります。今回はその筆記試験に焦点をあててして、その内容を見てみたいと思います。
筆記試験は、インタビューに続き二番目に多く行われるアセスメント方法であり、技術的なスキルを評価します。UNJIU(United Nations Joint Inspection Unit)によると、理想的にはこれは職種やレベル(グレード)によって標準化されるべきものであり、人事職員や採用マネージャーによって設計され管理されるべきです。リモートで受けられるオンラインのテストは増加傾向にあり、いくつかの機関によって採用されています。これはコスト観点からもより検討されるべき内容です。
一般職(GSポスト)の筆記試験に関して
UNJIUによると、筆記試験は定期的に行われているわけではなく、必須試験として定められているのは、いくつかの機関のみです。特定のカテゴリーに属するポストを除き、ほとんどの国連機関では筆記試験に対するスタンダードなアプローチはないと言えるでしょう。例えば、国連事務局では、ASAT(Administrative Support Assessment Test)という試験がGSポスト(一般職)に課されています。また、事務的なスキルや会計スキルを見るための特殊なテストも特定の分野のポストに対して行われます。他の機関(UNAIDS、UNDPやUNOPS)ではICDL(International Computer Driving Licence)がGSポストで求められます。IAEAでは、全てのポストにおいて、筆記試験が課される可能性があります。
言語試験に関して
言語試験はいくつかの機関で課されますが、ほとんどの機関では公式にはあまりテストされていません。言語試験が課されている機関として、IMO、WFP、FAOが例としてあげられます。IMOではショートリストに選ばれた候補者はBULATS試験というCambridge大学によって作られたオンライン試験を通過する必要があります。WFPでは、面接試験の前に、学業において求められる言語で教育を受けている場合か、国連の言語の資格を持っているか、ALTE(Association of Language Testers in Europe)のメンバーでない限り、第二外国語の試験が課されます。面接が英語で行われるため、英語はテストされません。テストは人事部によってコーディネートされ、外部の会社によって電話で行われます。FAOではGSポスト(一般職)に対して、テストが課されます。
ほとんどの機関では、筆記試験と言語試験は採用マネージャーによる裁量が任されており、一貫したアプローチはありません。いくつかの機関は、人事部とアセスメントセンターによって設計、管理されています。
他の採用のテスト方法に関して
他の採用テストとして次に述べるような評価方法があります。
- 口頭プレゼンテーション
- 技術的な知識を測る筆記試験
- パフォーマンス評価のレビュー
- パーソナリティ・認知能力・ワークスタイル・モチベーションを測るの心理測定評価
UNDPでは心理測定テストをマネージャーポジションに課し、IAEAではディレクターレベルに課します。オーストラリアのビクトリア州が出した「Best practice recruitment and selection – a tool kit for the community sector」によると、認知能力テストとパーソナリティテストを合せた試験を実施することで、仕事のパフォーマンスを(試験をしないよりかは)予見しやすくする上で効果を発揮し、このテストは全てのポジションに有効ですが、とりわけリーダーシップを発揮する必要なものは特に有効であるようです。
異なるテスト組み合わせて行われる場合
UNJIUは基本的には全てのポスト、とりわけ上級のポジションにおいて異なる試験を行うべきだと述べています。UNIDOは電話面接、筆記試験、口頭プレゼンテーション、対面面接を二日間以上に渡って行われます。UNOPSはP-5以上のポジションに対して、必須の筆記試験と口頭プレゼンテーションを含む面接が行われます。
UNDPは候補者を評価するために使われるテスト方法は、求められる資質(コンピテンシー)や技量のレベルによって帰る可能性があると述べています。これは次の方法を含みます。
- 委員会の推薦
- 実質的な知識を見るために設計された技術テスト
- 分析スキルと必要な仕事言語の熟練度
- 候補者のリーダーシップや管理能力まわりを評価するために設計された複数人による評価
- Behavioral-basedまたはCompetency-basedの面接
- 組織心理学者との面接
- 昔働いていた(および今働いている)上司のレファレンス
アセスメントセンターについて
FAO、ICAO、ILO、UNDP、UNESCO、UNFPA、WHO、そしてWIPOのような組織では上級ポジション(特に管理やリーダーシップを要するポジション)の評価にアセスメントセンターを使います。UNFPAではP-4以上、FAOやWHOのカントリーオフィスの長、UNESCOのディレクターレベル、そしてICAOのD-2ポストです。対照的に、ILOでは専門職(Pポジション)や一般職(GSポジション)の外部候補者や、内部の専門職(Pポジション)へ移る際にアセスメントセンターが使われます。
アセスメントセンターは、組織内で設置されることがあり、あるタスクに置いては部分的もしくは全面的にアウトソースされます。UNJIUではUNDPのアセスメントセンターががもっとも包括的で、効果的であるとレポートしています。
UNFPAは管理ポジションに関してのショートリストされた候補者のアセスメントをコンサルタント会社にアウトソースしており、いくつかの異なるテストが課されます。そのレポートがUNFPAに渡され、候補者選定のために使われます。WIPOではサービスプロバイダーによってアセスメントセンターが運用されており、重要なポジション(ディレクターレベル)に対して使われます。このアセスメントは心理測定のテスト、コンピテンシーベースト面接、スタッフマネジメント・ロールプレイ、そして戦略分析プレゼンテーションエクササイズが含まれる可能性があります。
総じて、アセスメントセンターはそのスタッフのパフォーマンスにおける効果を確かめることに用いられ、公平性や品質管理を高め、採用プロセスを標準化させるのに役立ちます。利点はあるものの、利点とコストを天秤にかけなければなりません。ある機関は、シナジー性とコストの観点から、アセスメントセンターはシニアポジションにのみ絞られるべきだと提言しています。
まとめ
以上を図にまとめてみますと、下記のようになります。これはまだまだ、カバーしきれていないところがあります。例えば、UNEPも毎回筆記試験があるそうですが、今回のリサーチでは調べることができていません。もっともっとに関してリサーチが必要だと思いつつも、国連組織によってかなり内容が異なるため、その差に戸惑っている自分もいます。みなさんのご参考のために情報を共有できればと思います。
以上、「国連組織の筆記試験について調べてみる」でした。