国連職員になる方法 後編
前回の「国連職員になる方法 前編」の記事で、国連職員になる方法を前編として二つ紹介しました。今回は、その後編になります。
今回はご紹介するのは、未経験でも合格すれば国連職員として働く資格を得られる夢のある方法です。
未経験でも可能性のあるYPP制度
Young Professionals Program、通称YPP制度です。これは高く熟達した能力を持つ者に対して国際連合事務局において国際公務員としての(専門家としての)キャリアをスタートする場を提供する制度です。この制度を利用するためには、試験を通る必要があります。但し、日本人にとっては極めて厳しい試験と言われています。日本人合格者は試験開始(2011年)以後、延べ300名が受験し、合格者は3名のみです。
応募資格
YPP試験は年位一度行われます。但し、応募するにあたって幾つか条件があります。
- 自分の国がその試験の対象国であること。
- 自分が申し込む分野の学士号以上の学位をもっていること。
- 試験終了日までの間、32歳以下であること
- 英語もしくはフランス語に堪能なこと
この4つを満たさなければ、YPP試験を受けることもできません。1に関しては日本であればほぼほぼ間違いなく対象国になるはずです(本家のサイト情報が古くなければ、日本は対象国に含まれています)。2016年に関しては66の加盟国がその対象になることが決定しています。毎年50,000通近くの応募があります。合格者は毎年100名程度と単純計算500倍です。
国連の一般職員も応募可能です
ある条件を満たせば、国連の一般職員からの応募も可能ですが、ここでは割愛します。
試験範囲
試験範囲はその年の国連のニーズによって募集される分野が変わります。また、求められる専門分野や教育などはそのエリアによって異なります。この募集される分野は毎年5月頃に発表される予定です。
応募プロセス
Inspiraに登録する
募集内容は、「 国連職員になる方法 前編」の記事でも紹介したInspira上にて公開されます。(2016年4月20日現在はまだ公開されていません。)そのため、まずはInspiraのアカウントを作成することが必要ですが、サイトの指示に従って登録しておきましょう。
Inspiraに個人情報を登録する
募集前でも個人情報は入力できますので、早め早めに自分の情報を登録しておくと、後で焦らずに済みます。
Inspiraのマニュアルは下記にありますので、迷われたらご覧ください。
Inspira上で応募内容に合わせて応募書類を作成し、応募する
各国40名!!
一つの国から書類が40名以上集まった場合、40名以下にするための人事部による選考が入ります。例えば、
- 応募資格を満たしているかどうか
- その人の経歴が募集項目にあっているのか
- 応募書類は正確かどうか
- 応募書類を未完成の状態で出していないかどうか
など見られるそうです。応募する多くの人が選考する以前の問題で書類選考に落ちるようです。各国40名で、66ヶ国が対象国になりますので単純計算最高2640名が書類選考を通過することになります。
書類選考に通ったら
書類選考に通った場合、筆記試験に進める旨が通知されます。筆記試験に落ちた場合でも、通知されます。
筆記試験(800点)
筆記試験は4時間半あります。時間配分は自分で決めることができます。筆記試験は2017年度の試験から、パソコン上での試験が一部の科目(POLNET)で導入されました。パソコンでの試験は、インターネットさえあればどこでも受験をすることができます。他の科目に関しましては、国連が準備する会場にて紙の試験用紙に書き込む形となります。
さて、筆記試験は主に二つの項目に分かれます。
一般問題(150点)
全ての人に課せられる問題です。英語・もしくはフランス語での分析能力や作文能力が問われます。約900語ほどの文章が出され、その文章を300語前後に要約する必要があります。文章には、タイトルやサブタイトル、パラグラフがありません。文章だけで要約する必要があります。この問題で最大150点採点されます。
専門分野に関する問題(650点)
ここでは実際の知識量や分析思考を見る試験です。自分の選択した分野の問題が出題されます。ここの問題は国連公用語である6つの言語で受験することが可能です。合計650点採点されます。
専門分野の試験パート1:選択問題(150点)
ここでは自分の選択した分野に関する50問の選択問題が出題されます。各問題は3点で採点されます。間違えた場合ポイントはつきません。
専門分野の試験パート2:記述問題(500点)
13の記述問題です。最初の3問は最大4ページの記述問題。後の10問は最大2ページの記述問題です。尚、メモ書き用の紙も用意されます。
注意事項
専門分野の問題は先に採点されます。また、同時に足切り点があります。足切り点を超えたものだけ、次の問題が採点されます。最初の足切りポイントは選択問題です。記述式問題にも足切り点があります。この記述式の問題で足切り点を超えた者のみが一般問題の採点に進むことができます。またデジタル機器の使用は禁止されており、使用した場合受験資格剥奪されます。
口頭試験(200点)
記述式のテストに通ると、口頭試験に進みます。試験の形はCompetency Basedのビデオ会議での面接となります。ここでは200点が採点されます。尚、Competency Based試験の概要は下記の二つのリンクが参考になります。
http://www.mofa-irc.go.jp/apply/dl-data/interview_taisaku.pdf#comp
結果発表
試験に通った候補者は個別に知らせがきます。残りの候補者はこちらのページで試験の過程が終了したことが更新されます。応募する分野によって、また応募者数によって、発表される時期が異なります。
合格したら
ルースターに登録
合格者は7月にルースターに登録され、2年間保持されます。2年経つとルースターから登録解除され、空席の対象者ではなくなります。再度ルースターに登録したい場合は再度YPP試験を受ける必要があります。
契約期間
候補者はルースター名簿から選ばれた場合、2年間の契約期間、国連事務局で専門家としてのキャリアをスタートすることができます。2年の勤務後、十分なパフォーマンスを発揮できた人は契約更新ができるかもしれません。
最初の契約
最初の契約はP-1若しくはP-2での契約になります。もし、職務経験がない場合はP-1からのスタートです。職務経験が2年以上若しくは修士号をもっている人はP-2からのスタートになります。他のポジションを受ける場合でも最低2年間は与えられたポジションにて職務を全うしなければなりません。
Managed Reassignment Programme
専門家としての最初の2年間の職務を全うすると、一年に一度Managed Reassignment Program(MRP)に招待されます。このプログラムで自分の興味の持つ分野で、他のポジション(通常他の部署や勤務地)で働くことが可能です。このプログラムの目的は経験の浅い専門家に新しい機会を与え、自分のキャリアを幅広く発展させること、新しいスキルの獲得、自分のキャリアの基礎を強くするために設けられています。当然、自分のチャンスや可能性を最大限伸ばすことを要求されています。
下記YPPの公式HPです。
筆者も実際にYPP試験を受験してみました
書類選考を合格し、2017年12月に書類選考に進みました。この筆記試験の結果は2018年の5月に出ると案内がありましたので、その結果を待っております。どのような試験内容だったのか、「国連のYPP筆記試験を受けてきました(2017年度)」に記していますので、ご参考になさってください。
毎年、YPPの試験内容には微調整が加えられていますので、この記事もその形式が変わるごとに加筆修正しないといけないなと思っています。
過去のYPP試験経験者と話してみても、筆記試験の内容は、大学院に置いてその分野のことを勉強していればそこまで苦労をすることがないレベルだということで認識が一致しました。わたしもMBAに進み、YPPもMAGNETというマネジメント、管理系の科目を受けまし。その際に、「MBAの勉強内容」と「国連のポリシー関連の資料」を読めば、知識的には十分に解けるなという印象を持ちました。
その知識の部分を抑えれば、あとは英文作成能力、論理力が重要です。Action Verbを的確に使い、英文を迅速に書く能力が求められると思いました。
番外編(政府からの出向)
外務省の資料によると、政府からの出向もあります。基本的には出身省庁に戻る前提ではありますが、若いレベルでの出向したものは将来の幹部候補になりうるとのことです。しかし、現実問題各府省も業務上多くの人材を派遣することは難しいようです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000087504.pdf
以上、国連の職員(専門家)になる方法を二回にわたってお届けしました。