2019年12月で4年強務めてきました国際連合を退職致しました。
過去に国際連合に勤めたことがある日本人は数多くいれど、そういう人たちの情報はなかなか表に出てこないと思います。今まで国連をはじめとする国際機関で働きたいと思っている方に多く会ってきましたが、やはり謎の多いと言いますか、知られていない情報がたくさんあると思います。
この転職エントリーと共に、実際に入って感じて良いと思った点と私が物足りなかった点を書いていきたいと思います。あまり負の面は今まで書いてこなかったので、今後目指したい方にとっても参考になる部分があるのではないかなと思います。
働いていた場所
私が働いていたのは国連事務局で、アジア太平洋地域におけるリージョナルオフィスでもある国際連合アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)と言うところで働いておりました。わかりづらいので以後国連と表記します。
私はその中でも情報通信技術(ICT)の部門にいました。ICTといっても国連では対外的に行うプログラム系の仕事(いわゆるその地域におけるICTの発展に寄与する仕事)と国連の中にあるICTの運用能力を維持・向上させる管理系の仕事と2種類があり、私は主に後者のプロマネ系の仕事を行なっておりました。
国連に入ってまず驚いたのは、国連で導入しているITシステムが古いことや、効率よく働くメンタリティが欠如していることでした。パソコン機器の反応が悪い、インターネットが遅い、社内システムの待ち時間が長い、情報管理が属人的でどこに適切な情報があるのかわかりづらい、プロジェクト管理も属人的で遅延しがち、PDCAを回さないのでなかなか組織的に動いている感じがない…など様々でした。
最初は「大きな組織だからなのかなー」と思ったりしたのですが、別の観点から言えば自分のバリューの出せる部分が色々ありそうだなということで、割といろんなことに挑戦しました。また、IT部門のNo.2の人の直下で特定のチームに属さずに好きに仕事ができたので、その部門にしてはいろんな仕事に関われ、幅広い経験を積め、環境に恵まれたなと思っています。
例えばプロジェクト管理が完全にアナログで行われており、それをデジタル化して組織における見える化(透明性を高める)したり、国連のプロジェクト管理のフレームワークであるPRINCE2をもとにプロジェクト管理の標準化を進めました。後にグローバルレベルでのPMO標準化チームにも抜擢され、自分たちがやっていることが一番まともな運用をしていたので、そのナレッジを共有したりしていました。
このプロジェクト管理に付随してBI(ビジネス・インテリジェンス)で組織的にレポートを作っていたのですが、国連を辞める直前に国連BIコンテストがあり、上司のすすめで応募し運よく優勝することができ、有終の美を飾ることができました。
国連内で働いている方は僕のインタビュー記事がどこかに載っているはずなので、もしお時間があるときに見ていただければ幸いです!
そもそも、なぜ国連で働き始めたか
当時国連で働くとは全く思っていませんでした。たまたま国連で働く機会があったからです。きっかけは、2015年に仙台で開かれました国連世界防災世界会議という国連会議におけるICTのコーディネーターの仕事をたまたまバーで知り合った方にスカウトして頂いたことです。
そのICTコーディネーターの仕事をしていた際のカウンターパートナーが後の私の上司になる方で、その会議の仕事をしている際にお互いの仕事で意気投合し、国連会議後に正式に雇ってもらいました。
いわゆるコネ採用ですので、国連で働きたいという人にとってはあまり役に立たないかもしれません。ただし、国連の人と繋がりをもつと、僕みたいなパターンが意外とありますので、正規のやり方を愚直に目指しつつもネットワークを築いていくことも重要だと思います。
(一般的に見て)国連で働くことのプラス面だと思うこと
国連で働く上でプラスになる点を挙げてみると下記のようなことが挙げられます。
- 国際的な環境下での仕事
- 日本人でも個性的で面白い人が多いし、民間で働いてては会えないような人と会えたり、繋がりができる。(大臣級含む政府関係者や大使・大使館職員、学者、NGO関係者、その国の大金持ちなど)
- 基本周りが修士号もちなので、ある程度専門を持ってる集団の中で働ける。的外れなことを言う人もいるが、総じて話がわかる人が多い。ただし、仕事ができるとは限らない。
- 世界の課題に貢献しやすい?
- ワークライフバランス(プライベートの時間がたくさん)が良い
- 悪くない給与(年収1000万円越えは珍しくない)
- 福利厚生の充実や特権(有給30日、病欠(有給消化する必要なし)、各種保険や国連年金(ランクと勤続年数により変動、人によっては国連年金で月60万円)、学費補助(75%)、車やお酒の購入に伴う関税免除、国への所得税等支払い免除)
主観的な点なので、組織によって違うでしょうし、感じ方も人それぞれだと思います。
実際に自分が国連で働いてよかったなーと思ったこと
国連で働けてよかったなーと思ったことをあげると7つぐらいあります。
- 国際的な環境下で働けて度胸がついた。海外の人と話す際に物怖じしなくなったし、自分の仕事の仕方でもやっていけることがわかり自信がついた。
- 国によって働くにあたっての価値観や、メッセージの受け取り方に大きな差があるので、目的を果たすためには人それぞれにメッセージの伝え方を工夫し、多様なアプローチを取る必要があることを学んだ。
- 上記の二点から派生することではあるけれども、調整する能力やステークホルダーマネジメントが伸ばすことができたかなと思ったし、伸ばしやすい環境なのかなと思った。
- 学歴社会の機関で働き、学歴の重要性を認識した。私も国連で働いたことをきっかけに修士号を取得し、今後も別の修士号や博士号もとりたいとアカデミックな興味が強まった。そして、学問は色んな論理を振りかざしながら説得しようとしてくる人に対する防御にとても有益なものであると学んだ(言い訳や口達者な人が多いので、そういう人に対して一方的に負かされるということはなくなった)。
- 副外務大臣、大使館、国連傘下の機関職員、学者、NGO団体等さまざまなバックグランドの人に会って話してきて純粋に楽しかった。
- ある程度の功名心が満たせた。働く企業や組織のネームバリューで自分の人生の満足度が違うことを発見した時はびっくりした。ネームバリューが重要だったとわかった今、そのメンタリティは卒業して、次なる自分を満足させる価値観にシフトして人生を充実させていきたいと思った。
- 日本の生活よりかは裕福な生活が送れた(とはいえ、これは純粋に滞在した国が違ったからなので、国によると思う)。
(一般的に見て)国連で働くことのマイナス面だと思うこと
国連で働く上での実際に注意しないといけない点をあげたいと思います。
- 自発的に勉強をしないとスキルがつかない可能性が高い
- 国連内で培ったスキルは国連外で使えるとは限らない
- 契約関係が面倒で、常に仕事を探し続けることに。昇級はなく、上のランクに昇格したければ一回一回空席ポストに応募する必要あり。実際に働いてよかったことは
- 怠惰な人が多い(与えられたタスクを忘れる人が多い。リマインドするのが基本、疲れる)
これは今まで会ってきた人でほとんどの方が納得しておりましたが、国連入る際には頭に入れておいた方が良いと思います。
国連で働く上で大変な点
国連で働く上で、大変だと言われてるのはとにかく生き残り続けることだと思います。国連は永久雇用ではありません(一部を除く)。1年や2年の契約期間が普通で、若手のうちは常に安定しない環境下で働くことになります。
一番日本人にとって国連に入りやすいのは外務省が行っているJPO派遣制度ですが、それも2年間のシバリがあります(三年目の延長も条件付きであり)。
コンサルも国連事務局に関しては2年以上連続で働くことができないですし、国連の組織によっては職員でも契約は1年間しか基本的には結ぶことが出来ないところもあります。
個人的な感覚では4年目を迎えることができれば、ある程度働き続けることに光が見えてくるように思います。(私も5年目を迎え、周りからの信頼も得られたような感覚もあり、このまま国連内で働き続けることは可能そうだという感覚を持てました。)
それでもずっとJob Securityの安定しないリスクを抱えながら、契約を更新し続ける(もしくは新しいポストを獲得し続ける)ストレスを受けながら働いていていましたし、長期的な予定を立てることができないので、それもかなりストレスでした。まだ私はそこら辺をしっかりとコントロールしてくれる上司がいたので幸運でしたが、Job Securityは「いい上司に巡り合えるか」というのと「その上司がしっかりと力のある人かどうか」の2点に大きく左右されると思います。
個人的に生き残る上で重要なことがいくつかあると思っていますし、そのナレッジを共有したいと考えているのですが、取り急ぎはそれは次回に回すとします。
じゃあ結局何が理由で転職したの?
転職する理由にはポジティブな理由とネガティブな理由があると思います。自分の中ではある程度この環境下で働いたことで色んな経験が積めたものの、卒業をして新しいことに挑戦をしたいというのが主な理由ですが、詳しく書いていきます。
転職理由1: 働き盛りにしっかりと働いてもっと規模の大きい仕事をしたい
昔から忙しく仕事をすることに仕事の楽しさを見出していた自分としては、国連のゆるい環境に物足りなさを感じていた。30代中盤なので個人的にここら辺の働き方で40代や50代の働き方が決まってくるのかなーと思っているので、より幅広い経験を積んで自分のキャパシティを大きくしたいと思っていた。
ゆるい環境というのはタスク量が少ない、タスクの難易度がそこまで高くないという意味で、日によってはその日のタスクが始業1時間で終わって、フィードバック待ちだったり、上司および上の人たちのパフォーマンスやスケジュールがボトルネックになったりする。
基本的に自分にきたボールはすぐに対応して、他の人にすぐ投げていました。ただ、周りの人は結構ずっとボールを持ったままになることが多いので、リマインドをすることが日課になりました。あるとき、80%以上の仕事がリマインドになっていた時は流石に心が折れそうでした。
ゆるい環境だったこともり、必然的に自分で仕事を探すようになり、組織内の透明性を高めたり、組織運営がスムーズにいくような取り組みを自発的にやって自己満足感をあげていた。
担当したプロジェクトも数千万円〜数十億円のプロジェクトで、それ以上のプロジェクト規模の仕事に関わることは稀。経済規模が必ずしも重要ではないと思う人もいるかもしれないけれども、個人的にはもっと大きな規模のプロジェクトに関わり様々な要件に対応できるようなスキルや経験をつけたいなと思っています。
ゆったり働きたい人には結構理想的な職場かもしれない。もちろん国連の組織によって物凄く忙しいところもあるので場所によるのだけれども、少なくとも私の職場ではあまり忙しいと思ったことが少なかったように思う。
転職理由2:マネジメントの経験を積むには国連の環境では物足りない
国連では平均年齢が高い。国際職員の中でインターナショナルポストの一番下のランクの平均年齢が30代中盤。一番下のランクでは担当するチームメンバーは10名もいかない(自分の環境では3人くらい)、ある程度上のポジションに行っても10名行くか行かないか。(他の国際機関は違うのかな?)
反対に民間で同じようなポストに就くと、何倍もの規模のチームで働くことができる。私も国連に入る前に既に50名以上のマネジメント経験があったし、私の同世代の友人では500人を動かしている人もいる。(別に数が重要だというつもりはないが、マネジメントのポジションにつきたい人にとってはチームの人数が少なすぎるのは自分の将来の幅を狭めると思ってる)。
国連では私は常に最年少の一人だったし、国連の上のポストに行くにも年数の縛りがある(応募したとしても、100%書類選考すら通らない)。
予算や人事制度にも縛りがあるので、気軽に人を増やすことができない。少なくともそのてんに関しては民間企業の方が柔軟性が高いと思う。
転職理由3:仕事を戦略的に進めたい
少なくとも私の働いていた組織はビジョンとそれに伴う戦略が弱く、またそれを進められるだけのパワー(権限や人、予算)に乏しかった。(人によっては戦略そのものがないという人も)
どうしてもその場限りの施策になってしまい、あまり深く物事を考えて仕事をする環境には程遠く、身の回りのチームでも上司次第になったり(上司によっては計画が潰されることも)、チームも雑多なことに忙殺されて、組織としてどう戦略的に仕事を進めていくのかに時間をかけられない(=本部などの、より上の指示をゆったりと対応することに意識が集中してしまう)。
組織として変化に(悪い意味で)敏感で、総じて腰が重い。歴史が長いというのはそれだけ、身動きが取りづらくなるものなのだなぁと思ったこともありました。
あまり仕事に多くを求めていない人(自己成長など)にとっては良いのかもしれないが、自分のスキルをスケールしたい人にとっては環境は好ましいとは思えない。
もし、より戦略的にインパクトを残せる仕事をするためにはDirectorレベルになる必要があると思った。(P2-4ぐらいではたかが知れてる)
転職理由4: 国連内でしか仕事ができなくなる可能性
あまり国連で長居しすぎると、国連内でしか仕事ができなくなる可能性があると痛感した。
それは今後自分のスキルがスケールできないことと同義なので、それは避けないといけないと思った。
特に私が仕事をしているのはIT分野であり、国連では使い古された技術しか導入しない傾向にある。IT業界で生きていく上では、常に後追い的な形になるので、スキル向上の上ではリスクでしかない。
例えばMicrosoftのOffice365をアジア太平洋地域の国連オフィスに導入するプロジェクトをリードしたけれども、プロジェクト計画、データ分析、テスト、コミュニケーション、導入、モニタリング等やっても結局は調整業務が主たる仕事になるし、技術的になんら難しいことをやってるわけではない。
ただし、調整業務は国連で仕事をする上ではとても役に立つ。しかるべき人にコンタクトをとって、しかるべきメッセージを伝えて、しかるべきアクションをとってもらう。これは仕事をする上では必須のスキルかも知れないけれども、国連独特の文化圏でそれをし続けても、国連のことに詳しくなるだけで、それ以上にはならない。
国連で生き残るためには国連システムに詳しくなる必要なので、国連で働き続けたい人は内部の仕組みをしっかりと理解することをお勧めします。
最初から一生国連で働くと考えている人にとってはいいのかと思います。
転職理由5: ある程度やりきった
初めての海外生活に、初めての公的機関ということで、新しい経験ばかりでした。初めはその文化の差に新鮮さを感じ、その組織内で自分のバリューを出すべく奮闘してましたが、ある程度慣れて自分の中で法則が掴めた感じがしました。
ある程度国連にしては大きなプロジェクトに関われましたし、国連内のBIのコンテストでも優勝ができました(小規模とはいえ、一応世界中の国連職員の中で一番になりました。)。
あとは単純に次に行こうと。
次働く場所: Kyash
今回転職するにあたりいくつかの企業にオファーをいただきました。
その中で、ビジョンや戦略、やりがい共に一番魅力的だったのがKyashでした。実はKyashは実際に国連で働く前に働いていた会社だったのですが、今までで一番充実した職場です。
当時は3人目ぐらいにジョインしたのですが、今や70名近くに!
実際に今年の1月から働き始めているのですが、毎日が楽しくて楽しくて仕方がない!現在はKyash Direct事業(BtoBのプロダクトを扱ってる事業)のプロジェクトマネージャーをしています。このプロダクトは革新的で、柔軟性が高く、社会に対しても大きなインパクトを残せるものだと思っています。かなり惚れ込んでいます。
これからしっかり働いて、Kyashに対しても社会に対してもいいインパクトが残せればいいなと思っています!
転職エントリーでウィッシュリストをのせるのが最近の慣習なんですかね、私ものせさせていただきます!この中のどれでも送って頂けましたら泣くほど喜びます。
ウィッシュリスト:https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/1ZLMH5R08O1EW?ref_=wl_share
また、一緒に働いてくれる方も募集していますので、興味のある方は気軽にお声をかけください〜!
どうぞよろしくお願いします^_^
国連に関するブログは続けます
まだまだ書き残したことがありますので、更新頻度は下がりますが、今後も書いていきたいと思います!