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平均年収.JPというデタラメな国連給与情報を表示するサイトにご注意ください

目次

1. あまりこういうことは言いたくないのですが…

2. 実際に間違いを指摘していく

3. 間違いその1: 役職別年収(一般職)

4. 間違いその2: 役職別年収(専門職・管理職・上級職)

5. 間違いその3: ボーナス支給

6. ここからはその他の疑問点です

7. 疑問点その1: 平均年収の算出には何のソースを使っているのか

8. 疑問点その2: IRと厚労省の統計って何だろう

9. 著者がとった行動

10. 平均年収.JPに直接問い合わせをする

11. Googleにフィードバックを送る

12. 自分の給料関連の記事をリライト

13. Twitterで注意喚起

14. 今回の注意喚起記事を書く←NEW!!

あまりこういうことを書きたくないのですが…

国連職員の給料についての記事をいくつか書いてきましたが、同時に「国連 給料」というキーワードでGoogle検索をして、どのような記事がアップされているのか定期的にチェックしています。

そこでとても気になるサイトがあり、しばらく監視していました。それが平均年収.JPというサイトです。(今回はそのページを評価しないようにリンクにno-follow属性をつけています)

Googleはそのコンテンツのわかりやすさや、読者の悩みを解決できるようなコンテンツ、独自性、被リンクの数などを考慮に入れたアルゴリズムになっていますが、なるほど、このページは良くできています。ページの構成や作り方、その簡潔な説明にとても私自身勉強になります。

国連に関して理解につながるような記事が増えればいいなと思っていますので、国連に関するコンテンツを提供してくれることは大変嬉しいことです。

しかし、国連の給料というコンテンツ内容や質に関しては、正しい情報とは言えません。むしろ、その逆で間違った情報をこれでもかというほど掲載しています。

今回はその注意喚起も含めて記事を掲載しています。

※この記事はあくまで国連の給料(年収)に限ったことですので、必ずしも他の職種の平均年収が間違っているというわけではありません。

 

実際に間違いを指摘していく

どういった情報が間違いなのかを指摘して行きます。

 

間違いその1: 役職別年収(一般職)

まずは下記の図をご覧ください。一般職の年収は300~700万円と設定されています。

平均年収.JPの間違った役職別年収
平均年収.JPの間違った役職別年収図。例えば、一般職の年収と専門職の年収を見て見ると目を覆いたくなるほど間違っています。

まず一般職ですが、私の知りうる限り一番下はルーマニアで年収100万以下です。

ルーマニア一般職給料
ルーマニア一般職給料。Level1のステップIを見ると32,028と書いてある。

これがルーマニアの一般職の給料です。この32,028RONを日本円に変えてみます。

RONからJPYに換金
RONからJPYに換金して見ると約89万円となる。

すると約89万円になり、平均年収.JPで示されている300万に遠く及びません。次にニューヨークを例に見て見ます。

NYの一般職給料
NYの一般職給料。どう見ても最高額は年収1000万円を超えています。

レベル7の最高ステップ(11)を見て見ると、10万USDを超えています。軽く年収1000万円は肥えるわけです。

このように地域によって年収はバラバラです。しかもニューヨークよりも年収高い地域はたくさんあります。当然、この上限はもっと上に設定されているわけです。

平均年収.JP一般職は1000万円いかないというFake info
平均年収.JP一般職は1000万円いかないというFake情報。ここではハイライトで目立たせて断定をしていますが、そんなことはありません。真っ赤な嘘です。

これでタチが悪いのが、ハイライトをして一般職は1000万円を超えることはないと断定している点です。現地採用とは一般職やナショナルスタッフ(NO)のことを指していると思うのですが、1000万円を超える拠点はかなり多く存在します。ナショナルスタッフに限っては私が働いているタイでも1000万円超えるランクがあります

 

間違いその2: 役職別年収(専門職・管理職・上級職)

次に専門職・管理職・上級職を一気に見て行きます。

平均年収.JPの間違った役職別年収
平均年収.JPの間違った役職別年収図。

この通り、専門職の年収は400~800万円、管理職は1200万円〜1350万円、上級職は1500万円から2000万円以上と書かれています。

専門職以上の役職は、基本給+地域調整額となっています。まずは基本給を見て見ましょう。

インターナショナルスタッフ基本給表(2018)
インターナショナルスタッフ基本給表(2018)です。この基本給に地域調整額を足した金額が給料(年収)となります。

この基本給に地域調整率を掛けた値が地域調整額になります。過去の地域調整レートをご参考にしていただくと、実際の給料が計算できます。

給料(年収) = 基本給 + ( 基本給 x 地域調整レート)

これを基準に「国連職員の給料 専門職・管理職・上級職」にて計算した給料が下記の通りです。

 

例:一番地域調整額が高いアンゴラで働いた場合の国連職員の給料

一番地域調整額が高いのはアンゴラ(109.8%)となり、大体の給料の目安は下記の通りになります。

レベル基本給地域調整額 109.8%合計額
エントリーレベル (P1 – P3)約400〜840万円約439〜923万円約839〜1763万円
ミドルレベル (P4 – P5)約785〜1153万円約862〜1266万円約1646〜2420万円
シニアレベル(D1 – D2)約1076〜1403万円約1181〜1541万円約2257〜2944万円
エグゼクティブ(ASGUSG約1450〜1581万円約1593〜1736万円約3043〜3318万円

例:一番地域調整額が低いルーマニアで働いた場合の国連職員の年収

一番地域調整額が低いのがルーマニアで9.1%です。これを同じく110円で日本円換算して見ます。

レベル基本給地域調整額 9.1%合計額
エントリーレベル (P1 – P3)約400〜840万円約36〜76万円約436〜917万円
ミドルレベル (P4 – P5)約785〜1153万円約71〜105万円約856〜1258万円
シニアレベル(D1 – D2)約1076〜1403万円約98〜128万円約1174〜1531万円
エグゼクティブ(ASGUSG約1450〜1581万円約132〜144万円約1582〜1725万円

専門職(P-1からP-5)の最低ラインは同じぐらいですが、最高額に大きな乖離があります。私が調べる限り最高額は2420万円で、平均年収.JPの860万円とは大きく異なります。それだけでなく、一番地域調整額が少ないルーマニアでも、1258万円で、約400万円もの差があります。

同じように管理職や上級職の給料にも大きな開きがあります。

何を根拠にこの数字を出したのでしょうか。

 

間違いその3: ボーナス支給

このページを見て驚いたのが、ボーナス支給に関してです。基本的には国連は一部の例外をのぞき、ボーナスは支給されません。

このサイトはリサーチをしたと書いてありますが、リサーチしてこの情報が出てきたことに驚きを隠せません。

平均年収.JP間違ったボーナス情報
平均年収.JP間違ったボーナス情報。ボーナスが年齢別に支給されるがごとくモデリングされていますが、ボーナスはありません。しかも男女で給料の差をつけています。国連は男女で給料の差をはいけないというポリシーがあり、これが本当だとしたら大きく違反することになります。間違った情報です。

しかも男女で給料が異なります。これは国連の男女平等のポリシーに大きく違反しており、仮に本当だとしたら大問題です。

 

ここからはその他の疑問点です

 

疑問点その1: 平均年収の算出には何のソースを使っているのか

ページを開いて一番初めに目がつくのが、その平均年収です。

平均年収は本当に正しいのか
平均年収.JPのこの平均年収はどうやって調べたのか。実際に平均年収を導き出すのは気の遠くなる作業が必要なはずです。

この情報はどこから計算したのかがとても気になります。私が知りうる公文書を見る限り、平均年収を書いているドキュメントはありません。

国連職員は上級職員・管理職(Dポスト)・専門職(Pポスト)・一般職(GSポスト)・フィールドスタッフ(FSポスト)とあります。そして、それぞれのポストにランクがあり、そしてステップ数という年が変わるたびに昇級する制度があり、ランクやステップ数によって給料が大きく異なります。

そして、これらのポストの給料や年収は勤務する拠点によって変わります。給料の計算方法は基本給+地域調整額です。

世界中にD/P/GS/FSポストのスタッフが散らばっているため、相当複雑な計算になるはずです。これを行うのは相当な労力を伴います。おそらく、GlassdoorPayscaleあたりの記事を参考に書いているのではないでしょうか。

Pay Scaleで紹介している国連平均年収
Pay Scaleで紹介している国連平均年収。ここでは$7.9Kと書いてあるので平均年収.JPの書いてある情報と似ている。

 

疑問点その2: IRと厚労省の統計って何だろう

次の疑問が、次の説明です。「各年齢を5歳刻みで年齢による年収や月給与・ボーナスをIRと厚労省の統計と照らし合わせてみた」

平均年収.JP。IRと厚労省の統計って何だろう
平均年収.JP。IRと厚労省の統計って何だろう。この図とその説明書きはきっと他の平均年収のテンプレートなんでしょうけど、国連には当てはまりません。

これは他の平均年収のコラムと同じ数式を使ったのでしょうけど、国連には当てはまらないように思います。

 

著者がとった行動

時間をおいて半年間以上監視していたのですが、一向に情報が修正される気配がありませんでしたので、2018年の5月に連絡をとりました。

平均年収.JPに直接問い合わせをする

メールアドレスが記載されていましたので、メールを送信しました。

表題:事実と異なる情報を含むページの訂正要請

管理人様

国連で働いております、亀山翔大と申します。

「国連 給料」のワードで検索をして管理人様の記事が一位にきていたため、内容を拝見致しました。
[リンク情報]

多くの事実と異なる情報が書かれております。何を情報源にしているのかわかりませんが、ユーザーに大きな誤解を与えるような内容であると思います。

事実と異なることが一つや二つであれば目をつぶって、「それぐらいの誤解はあるかもな」で済ますことができますが、この記事はそのレベルの話ではありません。虚偽の情報が一つや二つではないだけでなく、それらをわざわざハイライトして強調し、断定している箇所もあります。

もしかしたら、記事作成を外注して、その人が大したリサーチもしないまま記事を書いたのかもしれません。国連職員の口コミ情報と書いてあるので、その方々から聞いたのかもしれません。その人たちがどの程度、国連人事制度を知っているかどうかわかりませんが、いずれにせよ事実とは異なる情報が多く含まれていますので、訂正は必要だと思います。私の知り合いの日本人で国連人事に関わっている人たちにも記事を共有して確認を取りましたが、私と同様の認識です。

どのような背景があるにせよ、管理人様の責任において、事実に基づいた速やかなページの訂正をお願いできますか。

必要とあらば、国連の公式情報(英語)を提供致します。国連職員の平均年収など考えたこともなかったので、いい試みであると思います。ただ、内部にいる者として緻密で気の長くなるような情報の取得と計算が必要なような気がしますが、何か僕が知らない情報源があるのでしょうか。とても興味があります。手伝えることがあれば、ご連絡ください。

宜しくお願い致します。

亀山翔大

このようにメールを送りました。するとこのように返信が返ってきました。

亀山様

お問い合わせありがとうございます。
平均年収jpの運営担当吉岡と申します。

このたびは国連でのご指摘ありがとうございます。
こちらも元職員の方と国連が出している資料(かなり前のもの)を取り上げてあのような記事にしたのですが、

もしよろしければ、どのあたりの内容を修正すべきなのか・現状のお給料事情など是非ご指摘いただければと存じます。
それをもとに、再度じっくり精査しようと思います。

まず始めに、どのあたりの内容が違うのかリストにしていただいてもいいでしょうか。

このたびは真摯なるご指摘真にありがとうございました。
ご指摘お待ちしております。

何卒よろしくお願い申し上げます。

吉岡

ときましたので、下記の通り返信しました。

吉岡様

 
早速のご返信ありがとうございます。
 
元職員の情報と昔の資料を元にしているのですね。その国連にはそれこそ様々なランクやレベル、カテゴリーがありますので、把握している人はあまりいないと思いますね。その方々が職員だったのか、そうではなかったのかによっても大きく異なります。国連職員とは別にさまざまな外部契約がありますから、その契約によって額が一桁違ったりします。
 
また、給料は毎月変動します(基本給は変わりませんが、地域調整額が毎月変わります)。大きくは変わりませんが、少しでも古い情報になると信憑性が変わってくるかと思います。なので、もしこのような給料に関することを記事にするのであれば、いつ時点のデータをもとに算出しているかが(特にこの国際機関業界では)重要になってくるので、内部の人間からするとそこらへんの配慮をしていただけると嬉しいです。一般の人からしたら、「そんなところまで考慮に入れるのか」と言ったことがあるほど、かなり複雑な給料制度を持っていますので、なかなか理解されづらい部分でもあるかと思います。
 
一行一行の内容の精査まではできませんが、特に気になる箇所をリストします。。
  • ボーナスは出ない
  • 一般職員で年収1千万円を超えるところは(かなり)ある。例:東京、ジュネーブ、シンガポール等
  • 役職別年収は全面的に違いますね。この年収はNetでしょうかGrossでしょうか?例えば、専門職は基本給だけでも年収一千万超えるランクもあるので、年収上限860万円の表記は違います。また勤務地によっては1000万円どころか2000万円も超えるところもあります。私の書いた記事をご覧ください。https://blog.shota-kameyama.com/2016/04/16/un-salary-professional-staff/   東京に関しては一番下のランクであるP-1ですら最終的には1000万円近くになります。(ただしP-1は世界中でもごくわずかしかいませんので、東京にはP-1はいないかもしれません。)
  • (中略)
 
以上、御精査して頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 
亀山
この後返信が来ることはありませんでしたし、2018年の9月4日現在全く変わりません。(むしろ誤解を与えるコンテンツが増えているような。。。魚拓をとっておけばよかった)
 
私としては、これで変えてくれればよかったなぁと思ったのですが、全く変わることはありませんでした。もしこのページが、Google検索のトップページにランクインされていなければ全く問題ないのですが、いつも1番上にきていますから、無視をできない状況でした。しかも「国連 年収」と調べるとスニペット化(?)されています。
 
Googleで調べると平均年収.JPの説明がスニペット化される
Googleで調べると平均年収.JPの説明がスニペット化されている。これでさらに大きな誤解を生みます。

 

Googleにフィードバックを送る

Googleに対してフィードバックを送り、間違った情報であることを公式文章とともにお伝えしました。Googleフィードバックは検索画面の一番下と、このスニペット化されたものに関してはそのスニペット配下にあります。

この二つでフィードバックを送りましたが(2018年5ー6月)、残念ながら未だに検索順位が下がることはありません。

 

自分の給料関連の記事をリライト

自分の給料関連の記事が上にこないかどうか試行錯誤しながら、上位を目指していますが、これは自分の実力不足です。引き続き良質なコンテンツの提供をしようと努めます。

 

Twitterで注意喚起

あとはTwitterで注意喚起の投稿を何個かしました。

 

今回の注意喚起記事を書く←NEW!!

平均年収.JPに注意喚起をさせていただいてから4ヶ月経ち、平均年収.JPのアクションがありませんでしたので、今回改めて僕のブログで周知をしようと思い記事を書きました。

平均年収.JPの方の目にとまり、記事をしっかりと修正していただけた場合、この記事は取り下げます。以上よろしくお願いいたします。みなさんもご注意ください。

※再度申し上げますが、この記事は国連職員の給料や年収に関してのことであり、平均年収.JPの他の職種に関する情報を述べているわけではありません。

 

国連職員になるには

また、「国連職員になるには」の記事にて、国連職員になるために必要な準備や知っておくべき情報等が網羅的に書かれています。

関連記事 >> 「国連職員になるには

以上「平均年収.JPというデタラメな国連給与情報を表示するサイトにご注意ください」でした。

 

亀山 翔大
亀山 翔大
東京都出身。MBA。Project, Program, Portfolio Managementを専門。PMOとして働きつつ、イギリス大学院でサイバーセキュリティを学ぶ。前職である国連にて国連世界ICT戦略遂行、国連グローバルPMO推進。UN KUDOS! Award 2019優勝。プロジェクト(プログラム)マネジメント(PRINCE2/MSP)、サイバーセキュリティ(NIST CSF)等の資格を有する。 プロフィール詳細はこちら

1コメント

  1. はじめまして。
    その平均年収jpというサイトは悪質なデマアフィリエイトサイトです。
    知識のある学校関係者や進路指導者も「見てはいけないサイト」として知られているみたいですね。
    でも、知識がない人は騙されてしまうみたいですね。

    警察官ページでは、公務員なのになぜか総合職や一般職の区分けがあったり、口コミなどもほとんど虚偽だと思われます。
    https://heikinnenshu.jp/komuin/keisatsu.html

    マッキンゼーの年収は公表していないにも関わらず、適当に数字出しているだけみたいです。
    up or outのマッキンゼーで10年務めきれる人はほとんどいないのですが、しかも大学を卒業していない20歳で1300万円の年収とかわけわかんないです。
    https://heikinnenshu.jp/gaishi/makinze.html
    他のページも見ていくと無茶苦茶ですので、亀山さんの指摘は全く正しいです。

    山田コンペーという人が運営しているそうですが、著書も数値が不正確と批判を受けています。
    https://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%B5%A6%E6%96%99-%E8%81%B7%E6%A5%AD%E5%9B%B3%E9%91%91-Plus-%E7%B5%A6%E6%96%99BANK/product-reviews/4800258049/ref=cm_cr_arp_d_viewopt_srt?ie=UTF8&reviewerType=all_reviews&sortBy=recent&pageNumber=1
    ほんとに酷いサイトです。

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