すっかり年末になりましたね。久しぶりの更新です。YPP試験や、学業、研究課題の関係でなかなかブログの更新ができずにおりました。
今回はヤング・プロフェッショナル・プログラム(通称YPP)を実際に受験してみましたので、その所感を共有させて頂ければと思います。
YPPとは
YPPとはヤング・プロフェッショナル・プログラムの略で、才能溢れる若手に門戸を開いた競争試験です。
多くの国際機関で実施しており、YPP試験を受けるにあたって求められる職歴や学歴が異なります。
[st-card id=1463 label=”” name=”” bgcolor=”” color=”” readmore=”on”]国連事務局では、従来国連職員になるためには「修士号」と「職務経歴2年以上」が必要ですが、このYPP試験にあたっては「学士号」が必要で「職務経歴は必要なし」とより国連職員になるためのハードルが下げた試験となっております。
[st-mybox title=”ポイント” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#FFD54F” bordercolor=”#FFD54F” bgcolor=”#FFFDE7″ borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]国連事務局では
- 修士号ではなく学士号でも受験可能
- 職歴も本来2年必要なところ、職務経験なしでも受験可能
ただし、学歴が高いほどポイントが高く、関連した職歴があるほどポイントが高く評価されます。
[/st-mybox]YPP試験は門戸が広く開かれているだけに、競争力も高く、日本人も毎年一人合格するかどうかという厳しさです。
この記事では、私が実際にYPP試験を受験した際の体験記を記します。
今回受けたYPP試験はMAGNET
私の受けたYPP試験の教科はMAGNETというネットワーク(国連ではネットワークと読んでいます)を受験しました。
MAGNETとはManagement and Administration Networkといい、つまりは管理系全般に関わる仕事分野であり、下記の分野をカバーしています。
- 人事管理
- 管理経営
- 会計
- 給与支払い事務
- 財務
- 予算
- 調達
- 監査
- 調査
- 評価と経営分析
- ビジネスインテリジェンス(BI)
- プログラムマネジメント
つまり、これらのことを一つ一つ対策していく必要があるわけです。例えば、「人事管理」であれば、「戦略開発、優先順位決め、情報提供、ポリシー策定等のアシスト」、また「採用、学習、手当、権利、パフォーマンス管理、スタッフ管理、福利厚生を含む人事管理の全範囲の問題におけるプログラムの実施」に関することを指します。
また、管理経営に関することであれば、「施設・機材・コミュニケーション・輸送システムの管理やメンテナンスのサポート」を押さえておく必要があります。
これらは、その類の大学や大学院(例えばMBAなど)に通っていればカバーされる内容ですが、YPPはそれに加えて国連ではどのようにそれを扱うべきかということを知らなければなりません。場合によっては、その分野の大学院を出ていればある程度はカバーできる内容かもしれませんが、プラス国連の公開文章を読むことや国連の中で働いて身につける知識も同時に必要です。それ故、内部に勤めた経験がある人が有利であるわけですね。ただ、外部にいても、その対策は十分に取ることができますが、とにかく先ずはその情報取得が必須となります。情報習得するにもある程度コツが入りますので、このブログを通して色々そのコツをつかんで頂ければと思います。
YPPの試験構成
YPP試験の構成ですが、下記の通りツイートしました。
今回のYPPの構成は1要約問題、2選択肢の問題、3文章の問題で、合計4時間半だった。
時間配分は自分で行うけれども、一応目安の時間は記されてる。1が45分、2が1時間、3が2時間45分。
個人的に1の要約問題が一番時間がかかった。
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
3部構成になっています。()内の数字はおすすめ時間配分
- 文章要約問題(45分)
- 選択肢問題(1時間)
- 論述問題(2時間45分)
そして、自分の持ち時間は4時間半です。4時間半ですと、あまり長時間のテストに慣れ親しんでいない人にはかなり大変な内容かと思います。幸い僕は大学院の試験が毎回3時間ありましたので、それでだいたいの時間的な感覚は持てていました。人によっては4時間半集中力を持続する訓練が別途必要かもしれません。
また時間配分の目安が試験問題に書いてあります。ただ、この通りに行う必要はなく、自分の決めたペースで回答が可能です。
YPP試験に持ち込める物
こちらも忘れないようにツイートしてあります。
筆記用具としてボールペンと鉛筆が必須。鉛筆はマークシートを記入する用で、ボールペンは論述系の問題用に必要。
問題記入用紙は大きめの文字で書いても問題ないぐらいしっかりとページ数が確保されている。
問題冊子は結構分厚い。英語とフランス語が用意されているから。
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
ボールペンと鉛筆が必須です。まあ、といっても忘れても会場が用意してありました。(必ずしも用意されているとは限りませんので、受験の際はしっかり準備しましょう。)ボールペンは論述用、鉛筆はマークシート用です。
試験会場にはボールペンと鉛筆の他に、蛍光ペンも持ってっていい。これは(特に要約問題で)役に立った。
電子機器はもちろん持ち込み不可。電子機器は封筒のなかに入れるように指示される。(ホッチキスでとめられる)
座席はINFONETとMAGNETがそれぞれ一席挟んで座る形だった。
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
また筆記用具に関しては割と自由に持ち込むことができます。例えば、蛍光ペンや修正液など持ち込み可能でした。個人的には蛍光ペンは要約問題で役に立ちました。こちらはみなさんにもオススメです。
あとはスナックと飲み物持ち込み可能。僕はスニッカーズと白湯。個人的に2時間を超える試験の前は必ずスニッカーズを食べる。すると集中力が最後まで持続する(他も試したけど一番相性がよかった)。ただ、思いのほか脳を使ったので、大きめのものか二つもってくればよかったと試験半ばで後悔した
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
また、スナックや飲み物も持ち込み可能です。僕はスニッカーズと白湯を持ち込みました。人によるかもしれませんが、集中力を持続するための方法はそれぞれあるかと思います。僕は今やスニッカーズが試験の直前に食べるべきナンバーワンになってます笑。理由は高カロリーでナッツがとれ、糖分が足りないと感じないので、いい具合に脳みそを酷使できます(笑)ただ、4時間半を少し舐めていました。スニッカーズが一つでは足りなかったのです。二つ持っていくか、大きめのを用意すればよかったと思いました。
YPP試験会場の様子
これからYPP受けるけど、タイの場合はESCAPホールでやるんだ!正直全然準備できてないけど、四時間半頑張る。 pic.twitter.com/Guh16dijV9
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
バンコクのYPP試験会場はESCAPホールでした。かなりの人数を収容できる施設です。日本だと国連大学でしょうか?何か見学できる機会等があれば、のぞいてみるといいかもしれませんね。
試験会場はいい感じに室温を管理してた。同僚の勧めでジャケットを持ってった。たしかにジャケットを着てちょうどいいぐらいだと思った。
試験官は正直手際が悪い。チェックも甘そうなだし、チーティングし放題だと思った。そんなリスクを犯す人はいないと思うけど、世界規模でみたらどうだろう?
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
空調はいい感じでした。ただ、ジャケットの持ち込みを推奨します。寒すぎたり、暑すぎたりする場合の対策はしっかりとしておいた方がいいと思います。また、このツイートにも書きましたが、試験官の手際があまり良くなかったです。。。
因みにローカル国連スタッフも結構受けてた。ローカルスタッフだと年齢の制限がなくなるので、かなり高齢の方も受けている。正直、ずっと国連で勤めてたら簡単に答えられるようなものばかりだったので、完全に内部者に有利だ。ただ、内部通過者の数は絞られているので、それでも受かる人は一握り。
— 亀山 翔大@ unjob.siteを開発しました (@shotactor) December 14, 2017
ローカルの国連スタッフもYPPを受けている人が多くいました。所謂GtoPという種類のYPPで、こちらは年齢の制限がありません。ただ、内部の人の採用者は限られているので、狭き門であることには変わりはありません。
2017年のYPP試験出題内容
2017年のYPPは下記の質問が出題されました。記憶を頼りに書いているので、間違っている部分があるかと思いますが、お許しください。
YPP試験:要約問題
UNICEFの子どもの教育レベルと新データ方法に関して。最低水準の教育水準をクリアしていない子供が何億人もおり、それはただ単純に教育にありつけないだけでなく、学校に行っているのに最低水準の教育基準に満たないという驚くべき事実があるということ。ユニセフはSDGsに向けたベンチマークを2017年に作成。今後のモニタリングや一つの指標として活用する。
YPP試験:選択問題
選択肢までは残念ながら覚えていませんが、だいたいの質問内容は下記のようなことです。
- 調達におけるテクニカルエバリュエーション時にテクニカルプロポーザルにファイナンシャルプロポーザルが含まれていたらどうするか。
- 調達することの目的はなにか。
- 調達をする上で重要なことは何か
- IPSASにかんして
- Accrual accountingとは
- Financeの計算問題。繰越予算と通常予算が示され、翌年はじめにの受け取るべき領収証の額を計算。
- 6 sigma関連
- プロジェクトマネジメントの定義
- Job Classificationの定義?
- オフィスを取り壊し、新しく再建する際の予算に何が含まれるか。
- データ集計をしていたが、返信率が思わしくない。上司がどうにかするようにとお達しがあった。何をすべきか。(リマインドメールを送り、重要だと言うこと言う。アンケートをアジャストする。締め切りを伸ばす。上の者が命令していることを伝える)
- ルールに違反している人がいると通告があった。一通りの調査を行い、一番最後におこなうべきことはなにか。
- ルールに違反している人の通報があり、違反者への聞き取りをおこなった後、別の証人から今まで受けてきた報告や聞き取りでわかった以上にもっと酷い状態だということがわかった。どのようなアクションをとるべきか。
- Performance Evaluationの目的
- Job Descriptionの意味
- 購入したものが国に入ってくる際にはらうべき税をなんというか(direct tax, indirect tax, accelerated tax, and ??)
- テーブルにそれぞれ各国の人数が示されている。各オフィス60%は海外からの人を雇うべきという目標がある。これを満たしているのはどこか。
Argentina | Chile | 忘れた | |
Admin | 3000 | 4500 | 2500 |
Operation | 3000 | 2500 | 3000 |
忘れた | 3000 | 4000 | 3000 |
選択肢、Chileのadminは満たしている。ChileのOperationは満たしている。Chileの忘れた部署は満たしている。Chileのすべての部署満たしている。
17問まで覚えていましたが、残りの8問が思い出せませんでした。
YPP試験:小論文問題
必須問題(大)
プロジェクト2020というプロジェクトがあり、duty stationを他の都市に移す戦略プランがある。今まで4つの拠点があり、administrationがそれぞれにいたが、それを一つの拠点に集めて、より迅速で高品質なサービスを提供すること、また人員を2400人から1000人に減らすこと。また、knowledge transferやナレッジ蓄積を念頭に置くこと。またクライアントはスペイン語かロシア語をつかうひとがほとんどで、タイムゾーンはG+1。
その戦略プランにたいして、あなたの意見が求められています。どのduty stationにするのか5つ考えるべき項目を示せ。また、どこの拠点にするのか、その論理根拠を示せ。その際の現在のスタッフに対するインパクトを三つとその対処方法をしめせ。また、評価方法を二つ示せ。
テーブルが用意されてあった。言語、WHOの健康関連順位、Human Capital Index in skilled workers availableの順位、賃料、所得税、消費税、インフレ率、GDP成長率、失業率、国際空港の数、Wireless Technology(3G/4G)、人件費、政治体制、治安、タイムゾーン、オフィスの見つけやすさ、オフィスの土地の購入ができるかどうか、オフィスの賃貸の額、オフィスを建てるのにかかる年数等。
(1時間450-500words)
YPP試験:選択問題(中)
2問の中から1問選択
1、ある難民プログラムにおいてデータ集計をする必要がある。難民プログラムにおけるBasic Needs(健康、食、教育など)をはじめとした調査をする。上司があなたにプロポーザルをかけと命令される。では、どのような種類のデータが必要なのか答えよ。また、2つのデータ集計方法とそのrationaleを答えなさい。(30分、200wordsほど)めーるの文面で書く。
2つ目は解かなかったので、覚えておりません。。。
YPP試験:選択問題(小)
7問の中から5つ選択
1、国単位のトレーニングのデータ集計で、ある国がデータの有効性に疑問の残るデータがでてきた。(エクセルのデータに空きがあったり、アンケート調査の結果が全て10 out of 10だった)上司があなたに国の代表にメールをかいて、有効性に問題があること、あなたのConcernを伝え、また次のステップを伝えるようにとのお達しがあった。どのようにメールを書くか。(15分)
2、女性の職員を増やす際にどのような施策が必要か。有効だと思われるMeasureとなるものをそれぞれ二つ示せ。Recruitment、Career Training、Working Environemnt(15分)
3、外部監査にすることのメリットとデメリットを三つあげ、その根拠も示せ(15分)
4、HRがflexible working space とflexible working arrangementをすすめている。この3つの主なstakeholderを示し、どのようなインパクトがあるのかそれぞれ示せ。また、その3つのstakeholderの全てのリスクを軽減する施策を三つ根拠と共に示せ。(15分)
残りの3問が思い出せませんでした。。。
YPP試験を受けた所感
YPP試験を受けてみて感じたのは、素直な問題が多く、割と簡単だったなということ。ただ、簡単ということは、世界中の人も同様に感じているのであって、それはそれでまずいなと感じた。そして、試験終了した翌日、同僚に「試験を受ける前に知りたかった」と思うアドバイスをもらいました。とにかくYPPは文章力がとても重要で、特にUN Action Verbをいかに効果的に使うのかがとても重要で、管理系の試験はそもそも受験者が多いということもあり、このUN Action Verbや文章力のいかんによって合否が決まるのではないかということ。
確かに、PHP(Personal History Profile)においてもAction Verbをいかに効果的に使うかが重要です。それをすっかり忘れて、論述問題を回答していたように思います。とても反省。
ということも踏まえて、来年以降YPP試験を受けようと考えていらっしゃる方がいれば、ここら辺の対策もしっかりして頂ければと思います。
調べたらYPP試験を受けた方の体験記がかなりありました。
調べてみましたら、「ヤング・プロフェッショナル・プログラムの受験体験記を書いている記事まとめ」の記事にもご紹介しているように、様々な方がYPPの受験体験記を書いています。そちらも是非ご覧ください。
関連記事 >> 「ヤング・プロフェッショナル・プログラムの受験体験記を書いている記事まとめ」
また、国連のキャリアを考えていらっしゃる方や、国連で仕事をするにはどういうことを知ればいいのかを知りたい方のための記事「国連職員になるには」も書いていますので、そちらもぜひご覧ください。
関連記事 >> 「国連職員になるには」
最後に
今年も大変お世話になりました。このブログを通して、様々な出会いがあり、また話のネタとしても取り上げてくださる方が多く、改めてブログを書いてよかったなと思いました。現在、将来国連で働きたい方や、現在国連に勤めている方の国連就職活動が少し楽になるような企画しています。その企画の様子はTwitterを中心に情報発信をしていく予定でいますので、もしよろしければ私のアカウント(@shotactor)をフォローして頂ければと思います。
それでは、良いお年をお迎えくださいませ。
以上、「国連のYPP筆記試験を受けてきました(2017年度)」でした。