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国連で使われる成果重視型マネジメント(RBM)について

国連で使われる成果重視型マネジメント(RBM)について

国連で働くと様々な情報に触れることになりますが、成果重視型マネジメント(Result-based Management、以降RBMと表記します)もその一つです。こちらはYPPにも度々出題される問題でもあり、国連職員としてキャリアを築きたい人は知っておくと良い知識の一つです。ここでは、RBMの概要を紹介します。もし、国連で開発等に関わりたい人がいれば、ぜひRBMのことはおさえておきましょう。この記事の最後に、60ページほどで読めるハンドブックへのリンクも貼っておきますので、ぜひご覧ください。

RBMとは

1990年後半、国連はRBMを組織の実効性とアカウンタビリティ(説明責任)を改善するために着手しました。従来のマネジメントでは主に活動とそのアウトプットに焦点が当てられ、アウトプットに伴う成果は組織として管理不可能な部分として認識されていました。それを抜本的に見直すために、「成果を基準」にしたマネジメントであるRBMが注目されました。RBMは、すべての参加者が、一連の結果を達成するために直接的または間接的に貢献するマネジメント戦略であり、それらのプロセス、製品およびサービスが望ましい結果(アウトプット、成果、ハイレベルな目標や効果)の達成に貢献することを保証します。成果に重きを置くため、その分アカウンタビィティ(説明責任)と国のオーナーシップ、ステークホルダーの巻き込みを原則として定め、決められた物事を進めていきます。

RBMとライフサイクル

RBMはライフサイクルアプローチをとり、大きく計画・監視・評価に分けられます。計画では、ビジョンの設定、成果フレームワークを定義します。パートナーと一連の成果の合意がなされると、実行と同時に合意された成果が達成されるように監視が始まります。最後に、評価され、将来の意思決定や教訓として役立てます。

成果とは何か、そしてその決め方

ここでいう成果とは、国連では三つのレベルで構成されています。

  1. プログラムやプロジェクトのアウトプット
  2. 成果
  3. ハイレベルな目標や効果

そして、RBMは成果を決めるところから始めます。成果は三つのステージを通して決められます。

  1. 国の分析(政治・経済・社会情勢、開発における問題点の洗い出し、債務履行者と権利保持者の関係、根本原因分析等)
  2. 国連カントリーチーム(UNCT)や国連機関の比較優位性を評価し、今後のプログラムサイクルにおける開発援助を集中する特定の分野を決定する
  3. 優先順位の決定

そして、重要なことはここで何を実行するのかではなく、「何をどのレベルで変えるのか」に焦点が当てられます。例えば、「風土病が流行る地域における、80%の人が殺虫処理がされたベッドネットで睡眠が取れること」、「2008年までに90%の認知された幼児や弱った子供をソーシャルセーフティネットにアクセスできること」、「2012年までに女児の1200ある小学校の入学率を55%から95%に増やすこと」等の変化に直接コミットします。

国連プログラム開発における5つの原則

2007年より国連のプログラム開発(正確には国連開発援助枠組み(UNDAF: United Nations Development Assistance Framework))における5つの原則が設けられ、RBMはその内の一つです。成果重視と言っても、守らなければならない原則があります。成果をあげても、人権を侵害する方法であってはいけませんし、性による差別や、環境を壊してはなりません。これらの5つの原則がお互いに支え合いながら、プログラムの遂行をすることで、国連の目指している目標に近づけていきます。なお、5つの原則は下記の通りです。

  1. 成果重視型マネジメント
  2. 人権重視のアプローチ
  3. ジェンダーの平等
  4. 環境持続可能性
  5. キャパシティデベロップメント

RBMに於ける評価

成果重視型マネジメントという名前だけあって、評価はとても重要です。例えば、PRINCE2というプロジェクトマネジメント手法では、予め想定されうる成果を達成されるためのアクティビティに重視が置かれ、プロジェクトが完了した後の成果に関するマネジメントまでは重点が置かれておりません(ただし、プロジェクトが完了した後の成果を計測する手段や、責任の引き継ぎ等は定められています。)。つまり、プロジェクトを完了したけれども、成果の保証はしていません。RBMでは成果を保証しなければなりませんので、成果の評価をしっかりと行います。成果の評価手法はM&E(Monitoring & Evaluation)メトリックスが使われます。

評価における役割は二つで、より良い成果の達成のためのマネジメントツールとしての役割と、RBMの過程における品質保証ツールとしての役割が定められています。また、三つの主たる機能があります。

  1. プログラム改善
    プログラム改善は、評価を通して、戦略的な意思決定の材料(パフォーマンスや優れた実践に関する目標に関する情報や証拠)を提供し、必要な改善、導入方法や戦略に対する調整、選択の決定等に使います。
  2. アカウンタビリティ(説明責任)
    評価はそれぞれの説明責任の所在を明らかにする手助けとなります。また、有効な説明責任フレームワークには、信頼できる客観的な情報が必要であり、評価はそのような情報を提供することができる。
  3. 組織としての学習
    評価は、制度学習、政策立案、開発効果および組織効果に関する知識を構築します。

RBMの報告

ここではカバーすべき品質基準が5つ定められており、下記の通りです。

  1. 完了度合い
  2. バランス(良い成果か悪い成果か)
  3. 一貫性
  4. 重要性と信頼性
  5. 透明性、明瞭性

また、国連カントリーチームは、下記のことを書かなければなりません。

  • 何を達成したか、成功した指標のリスト
  • 想定された成果と実際の成果
  • ベースラインに対する数量化した達成項目
  • 引用文、感謝状、写真等を使って発見、得られた知見等の説明
  • 想定を超えた(下回った)達成の説明
  • 新たな戦略や再設計を要する予見していない問題や機会の説明
  • どのように結果を達成できたかの背景と次に活かせる情報の共有
  • 活動を裏付けるデータ

RBMをまとめてみて

先日勉強したPRINCE2と今回改めてRBMを比べてみて面白い発見があった。より大きな枠組みとしてのRBMとプロジェクトのマネジメントに特化したPRINCE2。RBMの

参考リンク:成果重視型マネジメントの手引き

参考リンク:国連開発援助枠組み(UNDAF)の準備に関して

参考リンク:Handbook on planning, monitoring and evaluating for development results (http://web.undp.org/evaluation/handbook/documents/english/pme-handbook.pdf)

参考リンク:Result Based Management in the United Nations in the Context of Reform Process: JIU/REP/2006/6

参考リンク:中央政府全体におけるモニタリング評価の能力開発活動の研究

亀山 翔大
亀山 翔大
東京都出身。MBA。Project, Program, Portfolio Managementを専門。PMOとして働きつつ、イギリス大学院でサイバーセキュリティを学ぶ。前職である国連にて国連世界ICT戦略遂行、国連グローバルPMO推進。UN KUDOS! Award 2019優勝。プロジェクト(プログラム)マネジメント(PRINCE2/MSP)、サイバーセキュリティ(NIST CSF)等の資格を有する。 プロフィール詳細はこちら

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