ホーム情報技術(IT)ICT戦略私のESCAPでの仕事内容...

私のESCAPでの仕事内容。国連ICT戦略を遂行して国連を裏から支える

UNESCAPでの私の仕事

2016年、わたしが担当していた仕事を簡単に紹介します。

わたしは国連アジア太平洋経済社会委員会(the United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)で働いています。国際連合の経済社会理事会の地域委員会の一つです(どのような組織があるのか、国連広報センターのHPに日本語でまとまった図が掲載されてありますので、是非ご覧ください。)。

http://www.unic.or.jp/files/organize.pdf

この組織(UNESCAP)の中で私は管理部、情報通信技術管理課に勤務しています。国際連合と聞くと、日本人にとっては平和維持活動や人権問題、環境、世界遺産などイメージしやすいかと思いますが、私は裏方的な役割を担っており、人道・環境・開発などのプログラム系の業務には携わりません。

わたしが勤務している部署では、国連内で使っているパソコン機器やプリンター、Wi-Fi、LANなどの組織内機器の整備やネットワーク、ESCAPに関連するウェブサイト、国連のデータセンターの管理などICTに関係するものを多くあつかっています。

ICTとは情報通信技術のことで、日本ではITという言葉の方が一般的かもしれませんが、わたしの課では「通信」もあつかいます。

わたしはその同じ課の中でも国連ICT(情報通信技術)戦略の推進、ICTコンプライアンス、セキュリティ推進など「プロジェクト」を動かす仕事をしています。

国連全体として、ICTの課題がいくつもあります。その一部を紹介しつつ、それをどのように解決しようとしているのかを説明したいと思います。このブログではあまり内部情報を書くことはできませんが、ICTの課題は国連総会(General Assembly)の決議書として一般に公開されていますので、それを個人のブログで公開しても問題ないでしょう。(笑)

 

国連組織としてのICT

 

資料は意外なほど公開されている

私がこれからあげる課題はドキュメントとして誰でも閲覧することができます。たとえば、国連総会で可決された下記のドキュメントには、それなりに詳しい国連のICTの内情が書かれています。

United Nations Official Document

United Nations Official Document

A/69/517のパラグラフ25を見てみると、下記のような記述があります。

Across the Organization, there are currently almost 2,000 applications, 70 ICT units, over 130 ICT help desks, 44 data centres and 177 server rooms

近年(国連)組織を通じて、約2000のアプリ、70のICTユニット、130のICTヘルプデスク、44のデータセンタ、そして177のサーバールームがあります。

 

国連のICTに関しては統合の流れにある

国連にはとても多くのアプリケーションがあります。多すぎます。それぞれの拠点でアプリをつくるので、機能が重複しているもの、セキュリティ的に問題のあるものなど含めて数多くの課題が見つかりました。これらの重複した機能を統合し、大きくまたより高度なシステムのまとまりとして管理していくことに重点的に取り組んでいくことに決まりました。

そのうちの一つのシステムがUmoja(ウモージャ、一つにまとまるという意味があります)です。Umojaは財務、会計、調達など国連の基幹機能の多くをカバーしており、世界中で同じクオリティのサービスを受けることができます。これが長期的に大きなコスト削減につながるとされています。

 

国連の旧体制とシステム(テクノロジー)の未発達が原因になっている??

そもそもなぜ大量のアプリケーションが存在し、大量に削減しなければならなくなったかと言いますと、様々な国連組織がある中で、それぞれの組織がそれぞれ独立してICTの環境を用意せざるを得ない状況があった、もしくは統一ルールがなかったのではないかと推測されます。それぞれの組織が各々にシステムを開発し、データセンターなど構えるなど行っていれば、統一感のないそれぞれの組織にカスタマイズされすぎた、小さなシステムが数多くできてしまいます。費用も嵩みます。またシステム(テクノロジー)が世界全体を一括で効率良く管理する程までに技術が発展していなかった(費用対効果が悪かった)というのもあるでしょう。

膨大なアプリケーションにより、費用がかさんだため、今までそれぞれの組織で独立して管理していたものを、ニューヨークのヘッドクォーターを基点とし、中央集権的に管理をし、重複しているところを統合し、国連全体の足並みを揃えていこうとしているのが今の流れにあります。

 

今でも多くの 国連職員がICTを十分に活用できる環境が用意されていない

実際に様々な国連組織にICTのことで話を聞いてみると、ICTをどのように活用し、どのような恩恵を受けているのか組織によって違いが見受けられます。温度差があるということは、ちゃんと認知されていないということでもあります。国連全体でどのように効率的に管理し、便利なサービスがあることを認識してもらい、活用してもらうのかが課題となっているように思います。

世界中に散らばっているオフィスをどのようにまとめていくか

では、そもそも世界中に散らばっているオフィスはどのように束ねていけばいいのでしょうか?それを解消しようと発案されたのが、リージョナルテクノロジーセンター、通称RTCです。

四つのリージョナルテクノロジーセンター

このRTCは既に各大陸にあるリージョナルオフィスに対して新たな機能を持たせるものです。

  1. アフリカ大陸ではケニアのナイロビ(the United Nations Office at Nairobi)
  2. アメリカ大陸はニューヨーク
  3. アジアはバンコク(the United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pacific)
  4. そしてヨーロッパはスイスのジュネーブ(the United Nations Office at Geneva)
RTCに関するガバナンス図
RTCに関するガバナンス図

 

これらの各RTCがその地域のICTに関わることを責任持って担当し、OICT (Office of Information and Communications Technology)が定めるICT戦略を遂行していきます。例えば、私のオフィスはバンコクにありますので、アジア全域が私の担当範囲になります。各オフィスの情報を集めて、同僚と協力をして各政策を進めていきます。まだまだ始まったばかりの機能ですので、少しずつナレッジを蓄積し、効率の良い運用を目指していきます。

このRTCに関する、ミーティングの一部も公開されています。例えば、下記のリンクは国連の様々な会議を中継するプラットフォームですが、そのプラットフォーム上で国連のICTタウンホールミーティングが公開されました。このミーティングは国連のICTに関わる全ての人の閲覧が推奨されています。

このように国連総会であげられている一つの課題に関しても、組織が大きいがために様々な工夫を凝らさなければ達成することができません。このリージョナルテクノロジーセンターのプロジェクトは私が担当しているプロジェクトの一部にすぎませんが、またの機会に公開できるものに関してはご紹介したいと考えています。

少しでも興味を持って頂ければ幸いです。

 

国連のキャリアに興味がある方は

国連職員になるには」の記事で、将来的に国連職員になりたいけれども何をすればいいのかわからない方、どんな学歴が必要なのか、また資格に関してなど、将来国連職員になりたい方のために網羅的に情報をカバーしています。もし、よろしければ一度目を通してみてください。

関連記事 >> 「国連職員になるには

以上「私のESCAPでの仕事内容。国連ICT戦略を遂行して国連を裏から支える」でした。

亀山 翔大
亀山 翔大
東京都出身。MBA。Project, Program, Portfolio Managementを専門。PMOとして働きつつ、イギリス大学院でサイバーセキュリティを学ぶ。前職である国連にて国連世界ICT戦略遂行、国連グローバルPMO推進。UN KUDOS! Award 2019優勝。プロジェクト(プログラム)マネジメント(PRINCE2/MSP)、サイバーセキュリティ(NIST CSF)等の資格を有する。 プロフィール詳細はこちら

返事を書く

あなたのコメントを入力してください。
ここにあなたの名前を入力してください

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

- Advertisment -