久しぶりの投稿になります。
先日、大学院最後の課題が完了し、あとは卒業を待つのみになりました。働きながらの大学院は本当に大変ですね。国連で働いていた時は仕事自体がゆるかったので、割と余裕がありましたが、日本の会社で働きながらというのはなかなかハードでした。(それでも現在の職場の仲間には気を遣っていただき、本当に感謝しています)
大学院はどんな様子だったのかをご紹介します。
大学院の情報
対象の大学院はThe University of Essex Onlineというすべてオンラインで完結する大学院でした。なお、この大学院では下記の3つのコースがありました。
- Postgraduate Certificate (PG Cert)
- 8ヶ月
- 修論なし
- £3,945
- Postgraduate Diploma (PG Dip)
- 16ヶ月
- 修論なし
- £7,891
- Master
- 2年
- 修論あり
- £11,836
いろんな国際機関の採用情報をみてPostgraduate DiplomaでもほぼMasterと同等と見なされることを知り、また個人的に修論なくてもいいかなと思っていたので、(修論が必要になったら、その時に考えようと思ったこともあり)Postgraduate Diplomaにしました。
学費は一括で支払えば10%の割引があったので、当時のレートで100万円ほどでした。卒業式のレンタルガウンなど別途かかる費用はありますが、全てオンラインで完結するので日本の大学院に行くよりは全然安いと思いました。
なお、選択したのはComputing DepartmentのCyber Security PG Dipです。
入学前準備
応募は思っていたより簡単に申請できました。
- 願書
- 前の学校の卒業証明書や成績表
- IELTSスコア
- ID(パスポート)
- CV
- Personal Statement
- 応募理由、なぜこのコースか、卒業後何をするか、関連するスキルや経験
この応募をした際に、IELTSの有効期限(2年)が過ぎてたので、別途大学院が用意している英語の試験を受けました(割とゆるいなと思った)。また、論理テストみたいな問題をSurvey Monkeyで受けて合否が決まりました。応募、テストともにとても簡素なものでした。
授業形式
全てオンラインだったので、空き時間で行いました。講義もあったのですが、講義時間と合わないことがほとんどだったので、録画を聞きました。以下授業形式と感想です。
- Required & Optional Reading
- 課題本が何冊もある。だいたい1週間に求められるのは100~200ページほど。全部読もうとすると200-300ページほどだったと思う。課題本の内容がそのままその週の課題になったり、ならなかったりとあるので、まずは課題になっている読み物から集中的に読んで対応した。
- Lecturecast
- SCORM形式で自分で進める。基本的なことばかりで内容的には薄いけど、導入としては(やった感は出るので)良さそう。大抵の講義ではここの内容をよく話したりしてたので、時間がなくてもLecturecastは対応してから講義にのぞんだ。
- Seminar Session
- 講義。Zoomセッションで講義を行う。録画もされているので、必須参加ではない。ただ、講師と話をできる少ない機会の一つなので、疑問点を解消したりした。
- Collaborative Learning Discussion
- 課題に対して200ワード以上で投稿し、生徒同士議論を行っていく。自分が投稿したら、他人の投稿に対しても返信しなければならないので、必然的に議論を深めていく形になっている。最後にサマリーを200-300ワードにまとめて投稿する。
- E-Portfolio
- その授業で行った内容をGithubページにまとめていく。授業で対応したことをE-Portfolioにのっける。コースによっては、このE-Portfolio自体が評価対象になるので、その時に頑張り他のコースではオプショナル。
- Coding Activity
- コーディングの活動。University of EssexではPythonしか使わなかった。Cyber Securityを受講していたので、Pythonを使ってわざと脆弱なサイトを作って、自分や他の生徒のサイトを様々なツールを使って脆弱性チェックや攻撃しまくったり、なるべく堅牢なサイトを作って講師と議論したりしていた。
- Group Activity
- グループでプロジェクトを立ち上げ、そのコース内にグループの課題を行う。コーディングや脆弱性チェック、レポートなどコースによって違う。一人一人のスキルが全然違うので(全体的にレベルが低かったので)かなり苦労した。グループの課題の質が低いと当然評価も低くなるので、他人のアウトプットを(論理構成が甘かったり、そもそもちゃんと理解していなかったりする人が一定数いたので)ガンガン直していかざるを得なく、コミュニケーションの仕方にかなり気をつかった。
- Reflective Activity
- その週の課題が与えられる。対応した課題をE-portofolioにのせる。
- Wiki Post
- その週の課題が与えられ、そのコースのWikiページがあるので、そこにまとめる。意味不明な課題だった。
- Blog Post
- その週の課題が与えられ、Blog投稿を行うというもの。そのコースの人しか読まない閉じられた内容。意味合いとしては、組織内のセキュリティ意識を醸成するため、「詳細に書くよりも、専門用語をあまり使わずわかりやすい内容」が求められる。
- Quiz
- 自動採点されるクイズ。どれだけ時間を要したかなども記録される。
オンライン授業でどうだったか
空き時間で行っていました。課題図書もあったので、基本平日夜に読み物を行なって、週末に課題を行なっていました。大学院としては週15時間以上の勉強時間を確保するように誓約書みたいなものを書かされます。実際に他の生徒の理解度や課題状況などを観察すると、15時間勉強していた人は一部だったと思います。
実際にオンラインコースはオフラインのコースに比べると、ドロップ率が高いことで有名です(これは様々な研究でも自明のこと)。いつ、どこでも、自分のタイミングで勉強できることもありself-regulation skills(自己抑制、セルフコントロール)が求められ、このself-regulations skillsと大学の成績やドロップ率が相関しています。オフラインの大学院は、とりあえず授業に出ようというモチベーションが働きますが、オフラインでは(録画されていることもあり)そうはなりません。今回Essex大学で授業を受けている人は全員フルタイムで仕事をしていた人でした。仕事だけでなく、家族との関係、その他いろんなことを調整した上で勉学に励まないといけないので、その自己調整の部分で苦労していた人が多かったのかなーと感じます。
課題自体はそこまで難しくありません。Passレベルであれば、正直誰でも取れると思います。あとは、どれだけ評価を上げるかというところで、どれだけ自分に厳しくできるかというところにかかってくると思います。フィードバックをもらおうと思えば、講師はいくらでも答えてくれるし、Zoomをしたいといえば調整してくれます。私は全てDistinction(アメリカでいうA評価?)を目指していたので、ひたすら自分との戦いでした。
よかったこと
とにかくいろんな論文を読めたことに尽きます。課題を行うにあたり、様々な論文を引用して自分の論理を補強していく必要があり、ひたすら論文を読み込みました。論文をよむにあたり、自分の知識がどんどん広がっていき、その分野の到達点と未開拓の部分が認知できたことも体験として素晴らしいものでした。多いときには一つの課題に対して100以上の論文を読み、あーでもないこーでもないと試行錯誤を繰り返した経験も(当時は辛かったけど)今となってはいい思い出です。
大変だったこと(あまり良くなかったこと)
いろんなものを犠牲にしていた感がとても強く、大変でした。慢性的な睡眠不足でした。プライベートの誘いはほとんど断っていたし、仕事ももっと働きたくても働けなかったし、何よりも家族の時間を相当削らざるを得なかった。周りの支えてくれた方々に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。(また本当に申し訳ない気持ちでもいっぱいです)。
あとは、オフラインの大学院と違って友達ができませんでした。そもそもあまり話すという機会がありませんでした。グループワークでも、最初はZoomミーティングをしていたのですが、そこまで効果があるわけではないことがわかったので、その後は全てChatコミュニケーション(SlackやDiscord)で完結させました。
また参加者のレベルが高いとは言えず、あまり生徒間での刺激し合うというのがほぼありませんでした(オンラインだからしょうがないのかな?)。Cyber Securityの授業なのに基本的なコーディング(コーディング以前に環境のセットアップもできない人もいた)もできない人もいたので入学時のスクリーニングは重要だなと思いました。また、講師の中でもあまりちゃんと理解できていない、もしくは最新の状況を知らない人がいて残念な方が複数人いました。例えば、GDPRの授業を持っている講師が生徒全員のプライベートメールアドレスを(事前許可もなく)コースで配っていたのは、英国式の高度なギャグかなと思いました(その後大学院に確認したところ、学部長が対応にあたっていました)。
ただ、残念な人ばかりではなく、とても熱心な講師は際限なくアドバイスをくれましたし、ある生徒とは作ったシステムを(授業と関係なく)見せ合って刺激し合っていました。
卒業まで
来年卒業するので、英国に行こうと思いますが、Essex大学のスチューデントアンバサダーに選任いただいたので、空き時間でそれまでこれからEssex大学に入りたいという人たちのサポートをしていきたいと思います。